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2022.11.22 『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』公開ゲネプロ(最終通し稽古)レポート

 喜劇王モリエール? フランス流のエスプリと風刺が効いた小洒落た喜劇かな……なんて気持ちで劇場に足を運んだら、とんでもない驚きのパンチが待ちうけているだろう。プルカレーテによって立ち上がる『守銭奴』の世界は、ユーモアの中にも時に背筋がゾッとするような、笑いと狂気のサンドイッチ。めくるめく120分に仕上がっていた。

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 主人公は、ドケチでごうつくばり、召使いや子どもたちにも極度の倹約を強要する老人アルパゴン(佐々木蔵之介)。このモンスターのような存在が支配し、フクロウや番犬の鳴き声が響く陰気で薄気味悪い屋敷で、兄クレアント(竹内將人)と妹エリーズ(大西礼芳)は強烈な父に怯え、身も心も凍らせながら暮らしている。そんな中でも、兄はマリアーヌ(天野はな)、妹はヴァレール(加治将樹)と恋を育み……。
 家族よりも金を愛するアルパゴンを、インパクトある風貌に拵えた佐々木は時に滑稽、時に狂気を帯びた老人として演じる。一人の人間が権力をふるう状況の異常さ、怪物のような怖さ、金に絡め取られた人間の哀しさ。そんな暴力的な存在に対抗する若者たちも、ズル賢く立ち回ったり、トンチを働かせたり、ただの可哀想な儚き存在とも言えない。召使ラ・フレーシュ(手塚とおる)、コックのジャック親方(長谷川朝晴)、貸金仲介屋シモン親方(阿南健治)をはじめ、アルパゴンに負けない個性を放つキャラクターたちを、手練れの俳優たちが演じる様も楽しい。結婚の取り持ち婆フロジーヌと、金持ちのアンセルムの2役を演じた壤晴彦は、このプルカレーテ版『守銭奴』における“魔法のような”キーパーソンだ。

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 ルーマニアチームによるスタッフワークについても言及しておきたい。壁がビニールで出来たミステリアスな舞台美術は、ドラゴッシュ・ブハジャール(舞台美術・照明・衣裳)によるもの。半透明ゆえに、奥にいる人間の気配を感じながら手前でも演技が展開できたり、複雑で面白い効果を生む。素材が軽いので風でフワッと揺れたり、裏を通り過ぎる灯がほのかに映る様も美しい。不気味で心をざわつかせるヴァシル・シリー(音楽)による旋律は、恐怖で人々を支配するアルパゴンを表すよう。役者による歌や演奏する楽曲も、彼の作曲。二人ともプルカレーテの世界を支える力強い存在だ。
 しがみつけばしがみつくほど、孤立化していく寂しさ。人間のエゴイスティックな愚かさを笑い、その心理を巧みにあぶり出すモリエールの凄みを、鬼才演出家はスケール感ある幻影に落とし込む。そのイメージにどんどん引きずり込まれた最後はしばし放心状態……。これからご覧になるお客様のために、終幕の風景はヒミツにしておこう。

文=川添史子 撮影=田中亜紀

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